• Department of Microbiology, Faculty of Medicine, Shimane Univsresity

追記:西倉先生の思い出

西倉先生は40年以上ラボを維持した突出した研究者で、RNA業界では非常に有名な研究者なのだが、一般的にはあまり知られていない。この一連のエッセイの最後に、同門会で話題に出なかった西倉先生のユニークな特徴を書いていく。

(1)大和撫子であり、アメリカン

西倉ラボにお世話になった時に、「私を一般的な日本女性と思ってはダメよ」と言われたのを思い出す。先生は極めて合理的な思考を持っていて、例えば、車が少しぶつかっていても全く気にしない。ところが、時々、自分流でお茶を立てていることがあった。先生の故郷の金沢では、茶道が非常にポピュラーで、生活の中に日本文化が溶け込んでいる。アメリカでも、日本人であるという強い信念を維持している印象だった。西倉ラボに移籍して数ヶ月で私の長女が生まれたこともあり、色々とご迷惑をかけたのだが、言葉の端々に女性ならではの細かい気遣いを感じた。ほんの小さなことの積み重ねだが、なかなかできることではない。大和撫子とアメリカンが1つの体に同居しているような、不思議な才能だと思う。

(2)芸術的センス

西倉先生の絵はシンプルかつ、芸術的センスが突出していた。絵が上手な研究者は何人も見たが、その中でもトップクラスではないだろうか。おもしろいのは、絵を描き出すと頭の中が、”画家モード”になるようで、ものすごい集中力で絵を仕上げていた。いつもの理論的思考と別の思考回路をうまく融合させているようで、留学してから20年ほどたつが、これまで西倉先生と同じタイプの研究者は見たことがない。絵がうますぎると、細かく描いてしまうのだが、無駄がないのだ。それでいて、ある種の美しさがあるのは非常に魅力的だ。もしかすると、芸術的な文化背景がある、金沢が出身地であるというのもプラスに働いているのかもしれない。

(3)食事

これも先生の特徴の1つで、先生は食事が大好きでかつ、苦手なものがあまりない印象だ。日本に帰国してから、北海道、出雲と先生の接待をすることができたが、食事について非常に楽であった。これも、米国で生き残るには重要な才能の1つだと思う。西倉ラボの項目で、タフであると書いたが、これもここに直結している。しかし、大食な人とはまた違うので、必要なら食事をしなくても集中できるところもユニークであった。

(4)綺麗好き

研究者の中には杜撰で、机の上は本だらけという人もいる。西倉先生は凄く綺麗好きで、とにかくよく掃除をしていた。では潔癖症か?というとそういうわけではなく、多少汚れていても気にすることはない。西倉ラボは非常に整頓されていて、全てが合理的であった。西倉先生から、「実験が終わったら、机の上はクリーンアップしなさい。すると頭の中も整理される」とよく言われたのだが、全くその通りだと思う。これは、うちのラボでも実践しているところだ。

(5)豪華な知人たち

本人は、人付き合いがそれほど得意ではないといっているのだが、西倉先生の周りの人はとにかく豪華だ。恩師2人(ジョン・ガードン、ロジャー・コーンバーグ)がノーベル賞を受賞しているし、高校時代の同級生が長田重一先生だ。この人脈の広さのおかがで、どれだけ研究がスムーズにできたかわからない。おもしろいのは、有名人も自分の友達も、西倉先生にとっては、それほど先生の中で大きく位置付けは変わらないようだった。もちろん、優しさだけでなく厳しさもあるのでダメな人には手厳しいのだが、これも西倉先生の非常に魅力的なところだろう。

自分の研究者としての基盤の大部分は、西倉先生によって作られたと思う。研究留学という貴重な機会を与えていただいた、西倉先生に改めて感謝したいと思う。

 

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